Sunday, May 24, 2009

今月の発見(5/2008)

元祖セレブお気に入り 
あのマリーアントワネットが熱狂したアヴァンギャルド・ミュージックとは?

今シーズン最後のコンサートが5月26日にジャズ・アット・リンカーンセンターで行われる。
今回の演目は、グルックのオペラ「アルチェステ」だ。
グルックという作曲家は1714年にドイツで生まれ、オーストリアの女帝マリア・テレジアのおめがねにかなって宮廷楽長の地位を得た。1756年にはローマ教皇からナイトの称号まで授けられたというから、その抜きん出た音楽の才能はもとより、かなりの野心家でもあったのではないかと思う。
ウイーンでは、1761年にバレエ「ドンファン」を、翌62年には代表作オペラ「オルフェオとエウリディーチェ」を発表。そして67年にはそれまでに彼が提唱してきた、”オペラ改革”(歌手の技巧よりも音楽の流れや」ストーリーを重視した)の集大成として「アルチェステ」が世に送り出されている。この時点でグルックは、王家の後ろ盾をもつ、地位も名誉もあるスーパースターだったといえる。
ハプスブルグ家のお抱え音楽教師でもあったグルックは、1773年皇女マリー・アントワネットのフランス王家へのお輿入れの際に一緒にパリへと移住している。華やかなことの好きな若きマリーアントワネットは、グルックという音楽界のスーパー・スターを付き従えて、さぞやご満悦だったのではないだろうか?王妃マリー・アントワネットの熱い支援で、大々的にパリの音楽界にデビューを果たしたグルックではあったが、その革新的なオペラ形式は、今で言うアバンギャルド音楽であったようで、賛否両論が巻き起こったようだ。「アルチェステ」はこの時期に元のイタリア語からフランス語に書き換えられ現在ではフランス語で演奏されることが普通だ。

250年前の元祖セレブのようなマリー・アントワネットがグルックの指揮で実際に観たであろうアヴァンギャルド・オペラ「アルチェステ」を時代がめぐって、私たちが現代のNYの最新のホール、ジャズ・アット・リンカーンセンターで演奏できることが一寸嬉しい。歴史が移り変わり人々の考え方も変わっているので、当時とは音楽の解釈もかなり違っているかもしれない。それでも私たちの心に感動をもたらすのは、グルックの音楽が真のクラシック(時を経ても変わらぬ良さがあるもの)だからであろう。
ちなみにグルックは1787年ウイーンで亡くなっている。熱心な後援者であり、かわいい教え子であったマリー・アントワネットがフランス革命で断頭台におくられたのは、それから2年後のことだ。

PS: 今回の主役アルチェスタを演じるソプラノはMETオペラの大スターDeborah Voigt(デボラ・ヴォイト)。昨日と今日リハーサルでご一緒させていただいたが、とっても気さくで、かつエレガントな方(矛盾するようだけれど本当)2004年に肥満を理由に役を降ろされるという憂き目にあい、その後手術で減量に大成功、という話はきいていたが、実際にお会いした印象は少しフクヨカかなという程度かな。それよりも痩せても全く衰えないその声量には圧倒された。世界のヴォイトを至近距離で鑑賞できる私たちコーラスは最高の贅沢を味わわせていただいている。

後日談: 

コンサート直前になって、実はヴォイトさんはインフルエンザのなおりかけで体調が万全ではないというアナウンスメントがあって、皆ビックリ。主役の上に出ずっぱりで歌うため、私たちコーラスは背後で結構ハラハラしながら見守っていたが、やはり途中でソロの高音の部分(一番の聞かせどころなのだが)を一オクターブ下げてなんとか凌ぐという、最悪の事態が起こってしまった。やはりというか、翌日のNYタイムス紙には、(病み上がりというハンディは認めながらも)そのあたりが厳しく指摘されてしまっていた。掲載写真には、演奏中のヴォイトさんの背後でコーラスメンバーのしかめ面(本当は彼女を心配しているた為なのだが)がしっかりと捕らえられ、ますます気まずい感じ。私個人としては、ヴォイトさんが体調不良を押してでも出演してくれたことを感謝したいし、たとえ多少手を抜いたとしてもそれは仕方がないと思う。逆にがんばりすぎて、かけがえのない声にダメージを与えては、それこそ取り返しのつかないことになる。まあ、こんなことも時には起こるということだ。



週末の小旅行でのスナップ ・フォト
グランドセントラル駅からハドソン河に沿って北上する列車にのって、テリータウンにいった。
これは列車がグランドセントラル駅を発車する直前に車窓から撮った一枚。
ノーマン・ロックウエル風の男性像が壁面に描かれていて、それを金網で保護してある。(前の席のおじさんの背後霊ではないのでご安心を)誰かこの壁画の由来を知らないかな~。何だか一寸気になる。

テリータウンには、ストーンバーンズという農場の中のレストランがあって、そこに行くのが今回の目的だった。敷地内にはアーティストが古い農具を組み合わせて作ったスカルプチャーが自然の中に愉快に溶け込んでいる。5月晴れを期待していたのに雨模様でゆっくり散策できなかったのが残念。
農場で取れたばかりの卵のコロッケ。これが食べたくてわざわざ遠くまでいったようなものだ。
半分に切ると半熟の黄身がトロリと出てくるのをソースのように新鮮な野菜サラダに絡ませて食べる。卵好きの私には堪えられない!

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